双葉町で見て欲しいあちこち

 双葉駅から伝承館までシャトルバスが出ている。でも貴方がもしシャトルバスを利用せずフリーで動けるなら、シャトルバスとは異なるルートを見て欲しい。下の写真は伝承館までの最短ルートにある光景だ。なお、撮影日は2020年3月末なので、現在は姿を変えている可能性もある。

 たとえば双葉厚生病院の駐車場。病院はもちろん閉鎖している。その駐車場に何十台もの車が眠っている。今でも走れそうな車もあるが、よく見ればタイヤの空気が抜けている。ナンバープレートを外した車もある。みんな、汚染されて移動できない車だ。 

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 もう少し歩くと汚染廃棄物の仮置き場が見えてくる。フレコンバッグ五段積み。写真はごく一部で、敷地は驚くほど広い。

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 これは伝承館の裏手、道ばたに寄せられていた津波による残骸の山。これは妄想なのだけど、この下に今も犠牲者の遺骨が埋まっているような戦慄を覚えた。つまりそれほど生々しいのだ。今はもう撤去しているのだろうか。しかし、津波の脅威を本当に伝承したいのなら、これらを保存すべきではないのか。

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 伝承館の近くに今も残る八幡神社。拝殿は流されたのか、小さな祠(本殿?)が置かれ、倒壊した鳥居の跡に新しい鳥居が建っている。こうした光景に地元民の思いがくみ取れないだろうか。奥には傷ついた民家も見える。

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 被災地には必ず慰霊碑やお地蔵さんがあるので、見かけたら手を合わせよう。そこが個人の敷地内にあったら、配慮を忘れずに。ここは、吊り下げられた鏡が印象的だった。

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 伝承館の公園から少し歩くと郡山海岸がある。地元の人に愛された海水浴場だった。僕もよく部活でここまで走った。松林は寂しくなったけど今も残っているのが心の慰め。写真は海の家、ふたばマリンハウス。この建物を震災遺構としてぜひ保存して欲しい。町民の思い出がたくさんここに詰まっているはずだ。

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 双葉町商店街も今は時間制限はあるけど自由に歩ける。震災の爪痕がいまだに色濃く、3月の時点では傾いた電柱もまだ残っていた。一方で、撤去されていく民家も多く、空き地が広がっている。流れていく時間と止まった時間が混在する、不思議な街だ。

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 かつて「原子力明るい未来のエネルギー」という看板のあった場所に掲げてあった写真パネル。一見、整然とした風景の中にも土地の記憶はある。自分の足で歩くのって大事だ。歩くことで、かつてそこにあった生活者の息吹を感じ取ることができる。

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